主イエスがベツレヘムで誕生したとき、王ヘロデはこの町と周辺一帯にいる二歳以下の男の子たちを殺害します。幼子イエスはヨセフとマリアに連れられ先に避難しますが、このイエスが誕生したために、名も知れぬ二歳以下の男子が一人残らず殺されました。このとき響いた叫びを、マタイによる福音書は預言者エレミヤが記す母ラケルの叫びに重ねます。
「こうして、預言者エレミヤを通して言われていたことが実現した。「ラマで声が聞こえた。激しく嘆き悲しむ声だ。ラケルは子供たちのことで泣き、慰めてもらおうともしない、子供たちがもういないから(2:18)」。エレミヤは主の言葉としてラケルの泣く声を示されます。ラケルの息子たち、イスラエル・ユダが滅ぼされ、遠くの国々へ連れ去られるからです。しかし主は「あなたの苦しみは報いられる」と言い、この息子たちが帰ってくることもあわせて告げます。
マタイによる福音書は男児殺害の事件にエレミヤ書の実現を見ます。それは、このとき誕生した幼子イエスが、やはり「自分の民を罪から救う」メシア・キリストであったからです。誰からも顧みられず、価値なく十字架で死んでいくほかなかった主イエス。このお方を神は死から復活させ、名も知れず殺されていくほかなかった者さえ帰ってくることのできるところとして、神はこの御子を示してくださいました。ラケルの涙をぬぐう御子が誕生させられたのです。
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このキリストの誕生を星に示され、占星術の学者たちが、まず御子キリストを礼拝しにやってきました。そして御子キリストのもとに立たせていただく礼拝が名も知れぬ先人たちの手を通して、わたくしたちのところまで届けられてきました。実に、御子キリストはわたくしたちが帰るところでありながら、この方が来てくださるので、この御子のもとに礼拝し、天の父なる神さまの前に共に立たせていただく日を待ち望んで参るのです。