主イエスのもとに来た律法の専門家が尋ねました。「律法の中で、どの掟が最も重要でしょうか」。主イエスは言います。「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい』。これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい』」。
これは十戒の要約であり律法の中心ですが、主イエスは何かわたくしたちが前提なしに「神を愛し隣人を愛しなさい」とは言いません。十戒に先立ち神はご自分の民を救った事実を示します。「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である(出エジプト20:1)」。神こそが、わたくしたちに目を留め、わたくしたちの叫びを聞き、わたくしたちを愛し受け入れてくださいます。神が愛しておられるからこそ、わたくしたちにとってこの掟が重要だ、と主イエスは言います。
神こそが、どこまでもわたくしたちを愛してくださいます。このお方はわたくしたちが死を前にしても、愛し受け入れてくださいます。わたくしたちは愛する者の死を前にして、その人と結んだ手をいつか離さなくてはなりません。しかし、神はこの手を離すことがありません。この神は、死にゆくわたくしたちをなお愛し受け入れる、永遠の父です。この約束を、十字架で死んだ主イエスを死から復活させて明らかにしました。わたくしたちは死を越えて交わる約束を頂くのです。
律法は、何かわたくしたちが守らねば救ってくれないかのような条件ではありません。主イエスが挙げた二つの掟は、むしろ復活の主イエスがわたくしたちをここへと導く希望です。今や、わたくしたちが死んでもこの実現へと立ち上がらせられる希望として、わたくしたちに示されています。わたくしたちを愛する神は、わたくしたちの隣人をも受け入れてくださいます。この神にわたくしたちは信頼して良いのです。